FortiGuard Labs 脅威リサーチ

Ransomware Roundup:Playランサムウェア

投稿者 Shunichi Imano および James Slaughter | 2023年2月21日

FortiGuard Labsは隔週で、フォーティネットのデータセットおよびOSINTコミュニティで活発化している特定のランサムウェア亜種に関するデータを収集しています。Ransomware Roundupレポートは、進化を続けるランサムウェアの現状と、ランサムウェア亜種を防御するためのフォーティネットのソリューションについて、読者にわかりやすく解説することを目的としています。

この「Ransomware Roundup」最新版では、Playランサムウェアを取り上げていきます。

影響を受けるプラットフォーム: Microsoft Windows
影響を受けるユーザー:     Microsoft Windowsユーザー
影響:             侵害されたマシンのファイルを暗号化し、ファイルの復号と引き換えに身代金を要求する
深刻度:            

Playランサムウェアの概要

Playは、2022年6月に初めて検知された、比較的新しいランサムウェアです。本レポートでは、Playとは、このランサムウェアを開発し配布しているグループの名前と、ランサムウェアの実行ファイルの名前の両方を指しています。この分野の他の多くの犯罪者と同様、Playは組織内のエンドポイントやその他価値のあるインフラストラクチャを暗号化し、身代金が支払われなければそれらのマシンから抜き取ったデータをインターネット上に公開すると脅すという「二重の身代金」方式を採用しています。

Playランサムウェアの感染経路

Playは、フィッシング、不正アクセスしたアカウント、公開されたRDP(リモートデスクトッププロトコル)サーバーなど、さまざまな一般的方法を使用して環境にアクセスすることが確認されています。ひとたび足掛かりを築くと、環境寄生型(LoTL:Living off the Land)攻撃を使用して探索し、目的のマシン上でマルウェアを実行するための基盤を準備します。

Playランサムウェアの実行ファイル

この実行ファイルはMicrosoft Visual C++で記述されており、マルウェアのアクティビティの調査を遅らせるためのデバッグ回避および分析回避機能をいくつか含んでいます。これらの機能には、ガベージコード(有用な目的を持たない、他の命令からの支援なしで実行できる命令)や、実行を袋小路に追い込む関数リターンが含まれます。

図1:Play実行ファイルのガベージコード

Play ランサムウェアの実行

ランサムウェアは起動すると、個人のドキュメントや業務ドキュメントなど、対象となるすべてのファイルを暗号化し(システムファイルには触れません)、それらに拡張子「.PLAY」を付けて残します。

図2:Playによって暗号化されたファイル

暗号化が完了すると、プライマリドライブのルート(例:C:\)に ReadMe.txt という名前のランサムノートが追加されます。これには、グループのTORページへのリンクと連絡先のEメールアドレスが含まれています。

図3:Playのランサムノート

「Play News」ランディングページには、Playの攻撃を受けたとされる企業がリストアップされ、収集されたあらゆるデータの公開予定までのカウントダウンが表示されます。支払いを拒否した組織のデータへのリンクもここに掲載されます。

また、犯罪グループに連絡できるコンタクトポータルや、同グループが行ったことを大まかに説明した「FAQ」、被害者がデータを復元するための手順なども用意されています。

図4:Play TORの「ニュース」カウントダウンページ
図5:Play TORの「ニュース」連絡先ページ
図6:Play TORの「ニュース」FAQページ

このブログを書いている時点で、「Play News」ページには現在脅迫されている7件のアクティブな被害者が掲載されています。被害者の地域別内訳は以下のとおりです。

図7:地域別のアクティブな被害者数

盗まれたデータが漏洩した被害者の地域別内訳は以下のとおりです。

図8:地域別の過去の被害者数

これらの情報によると、Playランサムウェアの犯罪者は、地域に関係なく被害者をターゲットにしているようです。1つだけ注意すべきなのは、偶然かもしれませんが、旧ソ連諸国の企業は「Play News」にリストアップされていないようです。

フォーティネットのソリューション

フォーティネットのお客様は、FortiGuardのWebフィルタリング、アンチウイルス、FortiEDRサービスによって、上記のマルウェア亜種から保護されています。

FortiGuard Labsは、以下のアンチウイルスシグネチャを使用して、このブログで取り上げたPlayランサムウェア亜種を検知します。

  • W32/Filecoder.PLAY!tr.ransom
  • W32/Filecoder_PLAY.B!tr
  • W32/Filecoder.OLT!tr.ransom
  • W32/Filecoder.NHQDTEZ!tr.ransom
  • Riskware/Filecoder_PLAY
  • W32/PossibleThreat

IOC(Indicators of Compromise:侵害指標):

ファイルベースIOC(Indicators of Compromise:侵害指標):

SHA256

f18bc899bcacd28aaa016d220ea8df4db540795e588f8887fe8ee9b697ef819f

e641b622b1f180fe189e3f39b3466b16ca5040b5a1869e5d30c92cca5727d3f0

608e2b023dc8f7e02ae2000fc7dbfc24e47807d1e4264cbd6bb5839c81f91934

006ae41910887f0811a3ba2868ef9576bbd265216554850112319af878f06e55

e4f32fe39ce7f9f293ccbfde30adfdc36caf7cfb6ccc396870527f45534b840b

8962de34e5d63228d5ab037c87262e5b13bb9c17e73e5db7d6be4212d66f1c22

5573cbe13c0dbfd3d0e467b9907f3a89c1c133c774ada906ea256e228ae885d5

f6072ff57c1cfe74b88f521d70c524bcbbb60c561705e9febe033f51131be408

7d14b98cdc1b898bd0d9be80398fc59ab560e8c44e0a9dedac8ad4ece3d450b0

dcaf62ee4637397b2aaa73dbe41cfb514c71565f1d4770944c9b678cd2545087

f5c2391dbd7ebb28d36d7089ef04f1bd9d366a31e3902abed1755708207498c0

3e6317229d122073f57264d6f69ae3e145decad3666ddad8173c942e80588e69

dd101db5d9503f33a0c23d79da3642e999375748f7c1532e98c813b114bdfa1a

47c7cee3d76106279c4c28ad1de3c833c1ba0a2ec56b0150586c7e8480ccae57

703075181922eb8db8d23279eaed8f7263dfa2b64383cff675da4cedc2394af5

f39d6741cbb99a81decbe5e75c07e846b5a36b40bc1bb0c0c61415300cc43b6c

8d94028bfaac5bef84c56b01f40e429ae4cdf799b2b755dfba9eee3b72448b5b

f0a3047e9d557e2150501e302d5e96a1c2669858fb0072f97024fe0dd07d5271

8556dfe5582a5647a5e96cd77e6239874504a01a9c7b9e512e70329ec6f61aea

5e94626c6bcb825acede3826811ed693644d6dbb7caeeefb8575c2ec711a65a6

a29e20d89e8c933e05b690b2779f82716fb31f688594b99d868e4382058caa8f

757524b09e5d4f2399172c4ac0f6996ec34dec90110542973d438d5370aff280

3a36e917a4a6587290a393d5b10d0bd42f99cf0c72a2e7de751a4bfaeb9d30c5

92f3abed62d710064a19f2a50c4482cd02adfd821ace4c2f3030f96290166189

157c43a3a4e014827e42cf4dd20cc8efa71cdf098f5d1d04b6cd1a972d6a8c7a

5eca08ddca898427de5ab13fedf25426102c3a0621d086b63f2e37d2d04ba3e9

2b4111121fb35b46665c42e3ea2cf1b8eda5afce580e310465cb259bb1abd053

12d1a0dc37d877dbf81bd18e8bd57b2843cc254c9a3cfcbecb70305612e60cae

bb51255ec929ae1fb34981b8b988769027ee49e68c0958a4a2a76b59a0dc1cff

51f44e31b0f3718a5d145a1f77fd79cbd7ff21fecf8bba3181fea019b508cfeb

73e19be4da76bb4e52cb82493c75690977fc3a5f589a9b47e834362545ef512a

bbd84d10f6a56bfeca23fd5d11d9e370fdfa91be73aa60c9d460b2671145c109

0ed328af77f2576071bfd543938fc01101daac01f216dc43bc091a8da4aff18d

f054f373cead893f868fd9b4acc24f751afefbb80cf961e305f97741f952a641

176476f9d924d83343a51a90ade097d12b7594dc5dbca1771c440047dfbe81eb

957a6aee2437a5c4d31372af2f6bceb29e1c7a49d650fe207cefc624bf6bca82

2e9126dfad03bdaf54f9b29ade42038c83f65ac7288376f45768901660f62d7b

2ab190542c3ec7b2b6e6d4bccce4c5d6a572f98c6bc89b014fea0c8fd6db6723

 

FortiGuard Labsのガイダンス

頻繁なシステム停止、日常業務への損害、組織の評判への影響、PII(個人情報)の破損や望ましくない公表などを考えると、すべてのアンチウイルスおよびIPSシグネチャを最新の状態で維持することが重要です。

大半のランサムウェアはフィッシングを介して拡散されます。したがって、フィッシング攻撃の理解 / 検知に関するユーザートレーニング向けに設計されたフォーティネットソリューションの活用を是非ご検討ください。

FortiPhishフィッシングシミュレーションサービスでは、実際の攻撃をシミュレーションし、フィッシングの脅威に対するユーザーの認識や備えをテストするほか、フィッシング攻撃を受けた場合の適切な対処方法を訓練および強化できます。

フォーティネットが無償で提供するNSEトレーニングNSE 1 – 情報セキュリティ意識向上には、インターネットの脅威に関するモジュールが含まれ、エンドユーザーは各種のフィッシング攻撃を識別して自らを保護する方法を学習できます。また、このトレーニングは社内のトレーニングプログラムに簡単に組み込むこともできます。

組織はデータバックアップの頻度、場所、およびセキュリティを根本的に見直し、進化を続け急速に拡大するランサムウェアのリスクに効果的に対処しなければなりません。デジタルサプライチェーンの侵害や、リモートワーカーがネットワークに接続することなどを考え合わせると、どこからでも攻撃されるリスクがまぎれもなく存在します。リスクを最小化し、ランサムウェア攻撃の影響を軽減するために、オフネットワークのデバイスを保護するクラウドベースのセキュリティソリューション(SASEなど)、マルウェアの中間者攻撃を阻止できる高度なエンドポイントセキュリティ(EDR:エンドポイントの脅威検知とレスポンス、など)、そして、ポリシーとコンテキストに基づいてアプリケーションやリソースへのアクセスを制限するゼロトラストアクセスやネットワークセグメンテーション戦略の活用を是非ご検討ください。

フォーティネットは、お客様のセキュリティエコシステムにネイティブな相乗効果と自動化をもたらす、業界をリードする完全統合型セキュリティ ファブリックの一部として、テクノロジーとエキスパート人材ベースのSECaaS(Security-as-a-Service)の幅広いポートフォリオも提供しています。これらのサービスを提供しているのは、経験豊富なサイバーセキュリティのエキスパートで構成されたグローバルなFortiGuardチームです。

ベストプラクティスは身代金の支払い拒否

CISA、NCSC、FBI、HHSなどの組織は、ランサムウェアの被害者に対し、身代金を支払わないよう呼びかけています。身代金を支払ってもファイルが復元される保証はない、というのがその理由の一つです。米国財務省外国資産管理局(OFAC)の勧告によると、身代金を支払うことで、別の組織を狙った攻撃や、他の犯罪者によるランサムウェアの配信を助長したり、法律違反の可能性がある非倫理的行為に資金を提供したりする可能性があります。FBIはランサムウェアの被害を受けた組織および個人向けに、ランサムウェア申告ページを開設しており、被害者はインターネット犯罪苦情センター(Internet Crimes Complaint Center:IC3)を通じてランサムウェア攻撃のサンプルを提出することができます。

フォーティネットのサービス

インシデントが検知されると、FortiGuard Labsの緊急インシデントレスポンスサービスが迅速かつ効果的に対応します。フォーティネットのインシデントレスポンスサブスクリプションサービスは、サイバーインシデントへの備えを強化するためのツールとガイダンスを提供します。これには準備態勢の評価や、IRプレイブックの作成およびテスト(机上演習)などが含まれます。

詳しくは、フォーティネットのFortiGuard Labs脅威リサーチ / インテリジェンス部門、およびFortiGuard AI活用セキュリティのサービスポートフォリオをご参照してください。